ぽつんぽつんと、変な日

ある日を境に変わったわけではなかった。

ただ、ぽつんぽつんと、変な日が出てきた。

私が仕事から帰ると、いつも灯りのついた台所で、母が食事の支度をしているというのが普通だったが、ある日、真っ暗な台所を通って居間に入ると、母はテレビを見ながら、毎朝父と一緒にお寺参りに持って行く鞄の中身を整理していた。

「あれ?どおしたん? ご飯は?」

と訊いても、何のこと?というような顔をする。

また、夕食が済んで、家族でテレビを見ていても、しばらくすると母は後片付けのために台所へ行くのが常だったが、ある日、いつまで経っても席を立たず、やっぱり鞄の中身を整理していた。

そして、もともと4時半には起きる人だった母が、私より遅く起き、何の違和感もなさげに、いつものことですよ、という顔をしてトイレに行く。

もともと母は入浴は好きで、欠かすことなく毎日入っていた。野球中継がある日は、わざわざラジオを持ち込んでも入っていた。ところがある日、母は、あの鞄を膝に置いていた。

財布を出して、またしまう。ハンカチを出して、またしまう。いつまでたっても終わらない。

「お風呂は?」と聞くと、「もうええわ。やめとく」と、難しい顔でそう言った。

その都度、だいたいみんななくては困ることばかりだから、仕方なくご飯を作り、仕方なく洗い物をし、仕方なく自分の部屋に戻った。

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